平成21年第2回北本市議会定例会請願文章表 議請第3号

更新日:2021年03月31日

平成21年第2回北本市議会定例会請願文章表議請第3号
受理番号 議請第3号
受理年月日 平成21年5月28日
件名 市街化調整区域内における用途変更及びそれに伴う建築物の建設に関する条例・基準制定の請願
請願者の住所
及び氏名
 
請願の趣旨 別記のとおり
紹介議員氏名 吉住武雄、湯澤清訓、阪井栄見子

【請願趣旨】

 昨年秋、高村建材工業株式会社埼玉工場跡地(北本市朝日2丁目160番地)に計画されている高層大型物流倉庫(以下、本倉庫)の説明会が、事業主である倉庫会社であるAMB Property Japan Inc.(以下、あわせて業者と記載)により開催されました。この説明を受け、私共はワコーレロイヤルガーデン北本居住者の有志で「高村建材跡地倉庫建設を考える会」を結成し、その建設計画を詳細に精査検討した結果、近隣の朝日別所地区の住民だけでなく、市民生活に広く多大な影響を及ぼす可能性が極めて高く、かつ建設に伴う北本市としてのメリットは極めて少ないとの結論に至りました。しかしながら、北本市においては、市街化調整区域における用途変更に関して、多くの自治体で制定されている都市計画法施行令第36条第1項第3号ホに対する規準、条例等がなく、建築基準法に準拠していれば、市街化調整区域に制限なく建造物が建てられる状況です。従いまして、私共は本倉庫の市民生活に及ぼす影響を例示し、現行の条例で欠けている市街化調整区域内における用途変更及びそれに伴う建築物の建設に関する条例基準の制定を請願いたします。

【理由】

 本倉庫の建設地域は市街化調整区域でありますが、建設地の北側には2,000人を超える市民が居住するマンション及び、東西南北いずれの方角にも古くから居住する市民の低層住居(都市マスタープランにおける既存の集落地)があり、住居系の用途地と同様の生活実態があります。従前の高村建材工業株式会社埼玉工場は鉄筋コンクリート管などのコンクリート建材の製造販売が主業務で、工場稼動時には昼間に若干の騒音の発生があったものの、近隣住民との間に特に問題なく共存が図られていました。しかしながら、北本市に対して用途変更申請がなされ受理され、今般建設が予定されている本倉庫はテナント式の物流施設であり、物品の各地からの集中集積、物品の各地への集中搬出が大型車両を用いて行われます。従いまして、高村建材工業株式会社稼動時とは比較にならない数の車両の往来が見込まれ、車両も最大14トンと大型化します。また、本倉庫の規模は高さ31メートル、長さ258メートル、幅81メートルと、やはり高村建材工業株式会社埼玉工場は比較にならない巨大な建築物が、一般住民が四方に居住する中に現れます。このことから、現在あるいは高村建材工業株式会社埼玉工場稼動時では、存在しなかった以下の問題点が考えられ、本倉庫建設に伴うデメリットはメリットをはるかに超えるものと考えます。

交通渋滞の発生、交通安全の危惧

 本倉庫の建設場所は北本市の都市マスタープランにある工業地域の富士重工業株式会社、万歳工業株式会社、株式会社AアンドDなどと異なり、産業用に整備されていない県道312号線に面し、本県道が車両の進入出路となります。前述いたしましたように、本倉庫はテナント式の物流倉庫であることから、絶えず大型車両による搬出入が行われます。先般の業者の説明では、車両としては最大14トントラック、車両数としては1日約300台、1日のピーク時の台数としては、午前7時から8時、午後5時から6時の間にそれぞれ50台が見込まれるとの事でした(1日のトラック台数は、業者の話では1日約300台が利用との説明を受けています。この台数が出入りをすると延べ約600台となり、ピーク時の台数約50台は出入りの交通量としては約100台に相当すると考えられます。)
 前述しましたように、本倉庫は県道312号線を出入口としています。本県道からの進入に際し、菖蒲側から右折で入る場合、後続車が右折車両を避けて通るだけの道路幅はまったくなく、交通の停滞を起こします。また、本倉庫から圏央道桶川インターチェンジに入るためには、富士重工業株式会社前の交差点を右折しますが、本交差点も右折帯がなく十分な幅員がないため後続車は避けて通れず交通停滞が生じます。業者の説明では、倉庫前の渋滞を回避するためにテナント業者に対しては、左折で倉庫へ出入するように協力をお願いするとのことでした。しかしながら、倉庫への出入りに伴う減速で交通停滞を誘発する上、倉庫に左折で進入するためには、車両は国道17号線の北本4丁目交差点を右折あるいは左折、古市場交差点を右折、北中丸交差点を直進するルートしかありません(小中型トラックでは県道311号線から北中丸交差点を右折するルートも考えられますが、311号線は両側とも歩道がない上、路側帯も狭い。しかも、小中学生の通学路でもあり、県道312号線と同様に、危険と考えられます。)この場合も、古市場交差点を右折せざるを得ませんが、古市場交差点も右折帯はなく、十分な道路幅もないこと、後続車が避けて通れず交通の停滞をきたします。また、本道路は幅員6メートルと狭く、現在でも、大型トラック同士のすれ違いや、自転車の走行、電柱などの道路占有物がありますと、どちらかの車両が止まらないと通行できない状態です。このような道路状況の中、本倉庫を利用する車両のピークは午前7時から8時、午後5時から6時とのことで、まさに通勤通学のピーク時間帯と重なります(この時間帯以外でも、1日のトラック数が約300台ですので、決して少なくありません)。本地域は自家用車で通勤通学する方も多く、また、路線バス、民間シャトルバス、企業バスも同じルートを走行していますので、近隣住民、市民だけでなく、市外から本市の企業や学校に通う方がたまで、広く日常生活に影響を及ぼすと考えます。さらにこの道路には、埼玉県央広域消防本部の北本東分署もあり、本倉庫の影響で交通渋滞が発生すれば消防活動にも多大な影響も懸念されます。
 次に、歩行者への影響ですが、県道312号線は国道17号線の東側に住む住民にとっては、生活の主幹道路です。しかしながら、ほとんどの場所で、歩道は片側にしかなく、古市場交差点付近の歩道幅は50センチメートル程しかありません。この付近は、歩道を大人がやっと一人通れるぐらいで、すれ違いの際はどちらかが畑か道路へ出て避けるしかない状態です。本倉庫を利用する車両の走行路は、中丸小学校、中丸東小学校、東中学校の通学路であり、多くの児童生徒が利用しています。また、生活の主幹道路で自治会集会場、農経済センター、整形外科医などもあることから、高齢者の方がたの通行も少なくありません。歩行者にとっては、今でも危険ですが、さらに厳しい状況になり、特に小中学生の登下校における危険性は許されるものではないと考えます。
 さらに、自転車ですが、本地域では自家用車と同様に多くの方がたが、自転車による通勤通学などを行っています。また、北本高校への自転車通学でも多くの生徒が、通行しております。しかしながら、県道312号線は道路幅が狭く、現状でも危険な状態にあります。自転車の歩道通行を認めるにしても、歩道幅が前述のように狭く、逆に歩行者の危険が増します。大型車両の増加は自転車運転手にとっては、極めて厳しい状況となり、また、大型車両同士のすれ違いが困難なことから自らが交通停滞を起こしてしまう原因ともなってしまいます。
 この交通状況に関して、業者の説明では、交通量調査の結果、本倉庫稼動後の車両の増加は問題ない範囲であるとのことでしたが、車両数だけでなく車両の内容(つまり14トンもの大型トラック)と動線が重要です。ピーク時では、業者の説明による1時間当たり50台とすると、平均して約1分12秒で1台のトラックが通過することになります。つまり、1回の青信号で必ず1台のトラックが右折するわけで、渋滞を誘発することは明らかです。また、通学する児童生徒も、登校中に何台ものトラックに身をさらすことになります。
 本倉庫建設に伴い倉庫を利用する車両の走行路は、県道312号線が進出入口となることから、産業用に整備されていない生活道路である県道312号線、311号線を必ず含みます。この道路は、不幸にも富士重工業から北中丸までの県道312号線では、交通事故による死亡事故が発生しており、古市場交差点周辺も埼玉県警の交通事故発生道路状況では、交通事故の「多い」場所となっています。従いまして、本倉庫建設による大型車両の増加は、間違いなく近隣の道路・交通状況の悪化に繋がり、近隣住民、市民だけでなく多くの方がたの日常生活に影響を及ぼし、生命の危険すら増すものと考えます。

周辺環境の破壊

 本倉庫は高さ31メートル、長さ258メートル(外周通路を除く)、幅81メートル、4階構造の完全な箱型で計画されています(添付資料1)。トラックによる物品の搬出入は倉庫の1階と3階で行われます。従いまして、3階で積み下ろしを行うトラックは倉庫外周のスロープを登り3階部分へ移動します。スロープ部分は登りが県道312号側、下りが反対側になりますが、トラックの坂道走行に伴うエンジン音騒音、排気ガスは、平坦な道路走行による騒音排気ガスをはるかに上回ることは明らかです。また、倉庫の稼働時間は業者の説明では、原則7時から22時を想定しているとのことですが、入居テナントによっては24時間営業もありうるとのことです。実際に、倉庫会社の他の倉庫では24時間稼動が行われています。前述しましたように、本倉庫周辺には多くの市民が居住しており、特に夜間の騒音(エンジン音、物品の積み下ろしに伴うフォークリフトなど騒音)は安眠の妨害となり、排気ガスの増加は健康にも影響を及ぼしかねません。
 次に、景観、眺望に対する影響ですが、本倉庫は高村建材工業株式会社埼玉工場に比べて著しく高層で、長さも258メートルにもわたります。すなわち周辺住民にとっては、巨大な高壁が目前に建築されるものと等しく、例え日照権の問題がないにしても、今までと比べ圧迫感の増すことは否めず、景観、眺望の悪化、天空率の減少もきたすものです。
 これらのことから、高村建材工業株式会社埼玉工場の稼動時に比べ著しい生活環境の悪化劣化をきたすことは明らかです。特に本倉庫の北側に位置する住居、マンションでは貴重な南側の景観、眺望、天空率が失われることから、私有財産価値の低下も十分に考えられます。

周辺住民への配慮・貢献がない

 先般の業者の説明で、周辺住民への配所貢献について質しましたところ、倉庫屋上の一部に緑化部分を設けるとのことでした。建設予定設計図では、倉庫は敷地内に従業員来客用の駐車場と、搬出入トラックの走行部分以外は、可能な限り敷地一杯に建てられる構造となっています。東京都内のように、ビルが林立している地域では屋上の緑化は、それなりに意味はあると考えますが、緑豊な当地において、マンションの最高層会の居住者しか見えないような屋上の一部のみを緑化して、近隣住民への配慮貢献といえるのでしょうか。いわんや、地球温暖化に対する対策などとは、お粗末と言わざるを得ません。
 本倉庫の北側にあるワコーレロイヤルガーデン北本ではマンション購入者の費用で公園を開発し、北本市に提供している(朝日3丁目公園)ばかりではなく、朝日地区の冠水抑制のため1棟の地下に貯水ピットを設置し、これまでの概算で年間100万円を超える区分所有者の拠出金を費やして、現在でも貯水ピットの維持管理を行っています。また、富士重工業株式会社は駐車場を貯水池とするために半地下構造で建設するとともに、北側に桜を植樹し遊歩道として、周辺住民に供しています。株式会社AアンドDは、グランドを野球サッカー場として、学校給食会はテニスコートを長年にわたり市民に開放されていました。
 このように、企業でもない一般居住者さえもが周辺への配慮貢献のため、資金を使っている状況下で、屋上の一部の緑化が周辺住民への企業としての配慮・貢献では到底納得できるものではないとともに、企業としての資質を疑わざるを得ません。
 

雇用と税の増加は期待できない

 昨年秋以来の、未曾有の経済状況の中、雇用や税収の確保が社会的に重要であることは、私どもも理解しております。しかしながら、本倉庫はテナント式の物流倉庫であり、倉庫会社の従業員は20数名に過ぎないとの説明を受けています。また、倉庫会社の本社は東京です。従いまして、雇用としては倉庫会社の自らの社員を除くと数名あるかないかであり、ほとんど雇用創出効果は期待できません。また税収につきましても、倉庫会社の本社は東京であり、現在も徴収されている固定資産税以外の増加分は20数名の企業住民税に過ぎません。
 一方、周辺住民におきましては、私共のマンションだけでも納税者は1,000名を越えており、本倉庫建設に伴い影響を受ける納税者はさらに多数に上ります。
 わずか20数名の法人住民税の増加のために1,000名以上の納税者が、交通渋滞による通勤通学状況の悪化、大型車両による交通事故の危惧、夜間の騒音、排ガスの増加、景観眺望の劣化、天空率の低下など住生活環境の悪化、さらには私有財産価値の低下に我慢しなければならないのでしょうか。また、一方で、被害を受ける居住者が自らの費用をもって、周辺への配慮貢献をしている状況で、ほとんど周辺に貢献をなさない企業の建設が許されることに矛盾はないのでしょうか。税の平等性という観点から考えると、本倉庫建設によるメリットは建設によるデメリットと比較にならないほど低いものであり、到底納得できるものではありません。

以上、高村建材跡地への高層大型物流倉庫の建設に関して問題点を詳述いたしましたが、これをまとめますと以下のとおりでございます。

交通渋滞の発生交通安全の危惧

  • 本倉庫を利用する車両が走行する県道312号、311号線は、大型トラックが頻繁に通行するための産業用道路として整備されておらず、歩道も確保されているとは言い難い。
  • 大型トラックが産業用に整備されていない周辺住民の主幹道路を頻繁に走行するため、歩行者、自転車などに、極めて危険であり、生命の危険すら危惧される。特に、小中学生の登下校に関しては深刻である。
  • トラックの動線には右折が必ず含まれ、右折帯や十分な幅員のない現状では、交通渋滞が避けられない。
  • トラックの数的ピーク、朝夕とも通勤・通学時に重なり、周辺住民の日常生活に大きな影響を及ぼす。

周辺環境の破壊

  • トラックがスロープを走行せざるを得ないことから、エンジン騒音、特に夜間の騒音、排気ガスによる健康被害の問題が危惧される。
  • 高層巨大建造物であることから、景観、眺望、天空率の悪化は明らかであり、周辺住民の私有財産価値の低下も否めない。

周辺住民への配慮貢献がない

  • 本倉庫の計画では、周辺住民への配慮貢献があるとは言えず、企業の地域貢献が重要視される昨今の社会情勢において、納得できるものとは考えられない。

雇用と税の増加は期待できない

  • 本倉庫の従業員数は20数名であり、倉庫会社の社員を除くと、ほとんど雇用はない。
  • 倉庫会社の日本本社は東京であり、北本市には20数名分の法人住民税の増加しか望めない。20数名分の法人住民税の増加(メリット)は、数千人ののぼる納税者の生活環境悪化(デメリット)を許容できるものではない。

 市街化調整区域において、建築物を建設する場合、北本市においても「北本市都市計画法に基づく開発許可等の基準に関する条例」に条件等が規定されています。しかしながら、市街化調整区域における用途変更に伴う基準及び、都市計画法施行令第38条第1項第3号(当該建築物又は第1種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は著しく不適当と認められる建築物又は第1種特定工作物で、都道府県知事があらかじめ開発審査会の議を経たもの
)(都市計画法施行令第36条第1項第3号))の審査基準等は規定されておらず、現状は建築基準法等に合致していれば用途変更申請が受理されてしまう状態です。すなわち、従前の建築物のいかんにかかわらず、用途変更を用いれば、関連法に抵触しない限りいかなる建築も建設が可能となり、強いては市街化調整区域の市街化が促進される結果ともなりかねません。前述の本倉庫に関しても多くの項目で従前の規模を上回っており、もはや市街化調整区域と言うより、工場区域あるいは準工場区域の状況となります。これは、都市計画法の目的を逸するものであり、緑豊かな北本市の都市計画を推進する上においても、可及的速やかに法の整備を請願する次第です。
 具体的な事例と致しまして、大阪府における「都市計画法施行令第36条第1項第3号(当該建築物又は第1種特定工作物の周辺における市街化を促進するおそれがないと認められ、かつ、市街化区域内において建築し、又は建設することが困難又は著しく不適当と認められる建築物又は第1種特定工作物で、都道府県知事があらかじめ開発審査会の議を経たもの
)(市街化調整区域内の建築物の用途変更について)に関する判断基準」を資料として添付いたしましたが、この基準によれば、本倉庫は従前のものを多くの項目で上回るものであり、建築は認められません。
 「緑豊かな自然と共生する安全で健康な文化都市」を望ましい環境像として掲げる北本市においては、市街化調整区域内に古くからの既存の集落地があり、自然との共生が行われています。このような区域においては、用途変更で建築物を建設する場合、施設の規模、交通量、操業による騒音等の環境の影響、景観眺望など、従前を越えるものであってはならないと考えます。従前を超える許容範囲を認めた場合、用途変更を繰り返すたびに規模の拡大が可能であり、結果的にどの様な建築物も建設可能となってしまいます。
 以上より、私共の考えに基づいた条例の素案を添付いたしましたが、近隣に圏央道のインターチェンジの開設が間近となった今日において、健全なる都市計画に基づいた北本市の整備、発展を図る上で、市街化調整区域内における用途変更及びそれに伴う建築物の建設に関する条例基準の制定整備を早急に請願するものであります。
 なお、多くの自治体が用途変更申請の場合、建築確認、図面等の添付が必須(審査する上で必要なため)となっており、条例の制定とともに申請にかかわる条項に関しても見直しいただきますようお願いいたします。

 

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