平成22年第1回北本市議会定例会請願文章表 議陳情第4号
永住外国人住民の地方自治体参政権についての陳情
【陳情要旨】
平素、地方自治と地域社会の発展のために貢献され、また日韓両国の友好親善と、在日韓国人をはじめとする永住外国人住民の法的地位向上のためご尽力されている貴議会に衷心より敬意を表します。
私たち在日韓国人をはじめとする永住外国人住民は、長い間、地域社会の一員として生活を営み、自治会や町内会などの地域活動に積極的に参加するなど、地域社会の発展の応分の寄与をするとともに、納税等の「住民」としての義務を日本国民と同等に果たしています。しかしながら、私たちは、地域社会で「住民」として住んでいる自分の街を暮らしやすくするための意志決定の最も重要な手段である地方自治体への参加の途がいまだ開かれていません。
貴議会におかれましては、このような状況を改善するため、すでに過去において永住外国人住民の地方参政権の早期確立に向けた立法措置が講じられるよう意見書を採択した経緯があります。これは1995年2月に、最高裁で永住外国人住民への地方参政権付与は違憲ではないとする判断が示されたことに立脚しており、これまで全国で1,500以上の自治体議会が付与に賛同の決議をしております。
しかるに、最近、永住外国人住民への地方参政権付与は憲法上問題があるとして最高裁判決を曲解し、時代に逆行した反対決議をしようとする動きがあり、私たちはこれを到底座視することができません。
つきましては、次の諸点に何卒留意され、一事不再議の原則からも貴議会の良識ある対応をお願い申し上げます。
1.【永住外国人住民への地方参政権付与は憲法違反するものではありません】
- 1995年、最高裁判所は、「外国人のうちでも永住者等であって、その居住する地方公共団体と特段に緊密な関係を持つに至ったと認められるものについて、法律をもって地方選挙での選挙権を付与する措置を講ずることは、憲法上、禁止されているものではない」。「付与するかどうかは国の立法政策に関わる事柄」との判断を示しました。
- 1998年10月以来、各政党から述べ11回にわたって永住外国人住民への地方自治体選挙権付与法案が国会に提出されております。法制局の審査を経て、意見ではないからこそ国会に法案が提出され審議されてきました。
- 永住外国人住民への地方自治体選挙権付与法案の国会審議に関しましては、1999年の第145回国会以来、すでに4会期約15時間にわたって審議されております。憲法違反を云々することは、憲法違反の議案を審議したことになり、国会の権威を大きく傷つけ否定することにつながります。
- 1999年10月には連立与党である自民自由公明の三党が「成立させる」ことで政権合意書に署名した経緯もあります。
また、日韓・韓日議員連盟は、1997年以来共同声明で早期の実現に努力することを決議し、2007年9月に行われた合同総会でも実現に向け与野党間の合意を導き出すため積極的に努力するとの共同声明を発表しております。
2.【私たちは地域社会の構成員であり、納税などの社会的義務を果たしている住民です】
- 半世紀以上にわたって地域の構成員として居住し住民としての義務を果たしている在日韓国人の歴史的背景と生活実態、またその大部分が日本で生まれた2・3・4世であることを踏まえ、戦後処理の一環として、また民主主義の理念と拡大の上からも、住民の基本権である地方自治体選挙権付与の措置が早期に講じられるべきであります。
- 私たちが生活している多くの地方自治体議会では、憲法上禁止されていない旨の最高裁の画期的な判断に立脚し、永住外国人住民に速やかに地方自治体選挙権を確立するための措置を講じるよう、国や国会に強く要望する意見書を採択しており、現在、全国1851自治体中、964自治体に至っております。すでに39都道府県が採択し(採択率82.9パーセント)、全国市レベルでは510の市が採択しております。これら地方自治体議会の決議を尊重され、民主主義のルールに則って国会で速やかに審議をし、立法化のための処置が講じられるべきであります。
3.【地方参政権について「帰化」を強要すべきではありません】
- 永住外国人には地方参政権が保障されているはずだとして、5年近く裁判をしてきました。地方参政権には「国籍」の論理ではなく、永年の「住民」性を根拠に付与されるべきとして裁判で争ってきたのです。95年の最高裁第3小法廷は5人全員一致で、永住外国人に付与しても違憲ではないと明示しました。国籍を変更しなくとも、永住外国人のまま「住民」として地方選挙権を行使しても憲法禁止されていないというものです。これによって帰化論は抑止されました。
- 地方参政権については、「国籍」を絶対の根拠にするのではなく、憲法第8章の地方自治に関する規定により、その「住民」性を根拠に付与しても可能だとして「住民」の論理が認められました。「国籍」だけを基準としてきたそれまでの解釈から一歩拡げ、永住外国人等の「住民」に付与しても憲法上禁止されないと最高裁は明示しました。
4.【「国益に反し、安全保障上問題がある」という考えこそ問題です】
- 永住外国人に地方自治体の選挙権を与えると国の損になり、害になるという考え方自体に問題があります。国際化が進展する中で、日本が成熟した民主主義社会であることを内外に示すことは、国際社会の信頼を得ると共に人権先進国として国際社会の大きな評価を得るものです。今までの規制の日本社会の枠組みを拡げ、豊かで活力のある地域社会にしていくという前向きのプラス思考の姿勢が何よりも大事です。
- 条例が法律をこえられないように、一定の枠のもとでの地方自治が基本です。法整備された地域社会システムに永住外国人が参入することで支障が生じるとは考えられません。最終的に首長が判断するわけで、議会の意見を聞いたり、場合によっては住民の意向を聴くなどして、国益や有事に関する具体的な障害が生じることはありません。事前に適正な法的処置がとられるからです。
- 反対論者は感情的というか、外国人はおよそ参政権になじまないという、俗耳に入りやすいレベルの話に歪曲しています。国防など極端なケースを生活に密着した地方自治体レベルに持ち出して議論すべきではないでしょう。また法案は投票権だけであって、被選挙権は除外されています。しかも申請主義を採用する予定です。永住外国人が投票権を持ったからといって直接問題が生じるとは考えられません。
- 地方自治体レベルの選挙では、自分の住んでいる町をどうするか、まず地域社会の利益のことを想定します。そもそも反対意見は、地方自治体選挙を<国家><国益>と結び付けすぎます。
- 米軍基地、原子力発電所とか領土問題とか、きわめて限られた一部の件について、国益や安全保障の面から外国人全体を危険視するのは、どう考えても乱暴な意見です。
- 島根県の竹島問題については、住民がどう考えるかの範疇を越え、国家の領土問題として取り扱うものであり、それはおのずと条例の枠を超えたものになります。ちなみに、県人口に占める在日韓国朝鮮人の比率は0.1パーセントにすぎません。(在日964名、県人口736,882名)これから見ても反対論者が危惧するほどのどれほどの影響力があるのでしょうか。
5.【OECD(主要先進国30カ国)中で付与していないのは日本だけです】
- 主要先進国30カ国によるOECD加盟国の中で、血統主義を採用し、重国籍を認めず、かつ一定の資格を有する外国人住民に参政権を認めていないのは日本だけです。
- 永住外国人に地方参政権を付与している国に住む日本人は、帰化を強制されることなく父母の国籍を保持し尊重したまま、その国の「住民」として地方自治体参政権を付与され、行使しています。また同時に日本国籍者である「国民」として日本の国制選挙権も行使しており、何らの問題も生じておりません。国際化が進展する中、ヨーロッパ諸国をはじめ、現在40余カ国で永住外国人住民に地方自治体参政権を付与しています。
- また、政治資金規正法は、外国の法人株式の50パーセント超を保有する企業の政治献金を禁止していましたが、2006年12月、同法を改正し、上場して5年以上になる国内企業をこの規定の適用外としました。
6.【韓国ではすでに日本人を含む永住外国人に付与しています】
- 韓国では2005年6月、外国人住民の人権保障に一環として、永住資格を有する19歳以上の外国人に地方自治体選挙権を付与する法案が成立し、2006年5月に実施された統一地方選挙において、日本人を含む永住外国人住民が選挙権を行使できるようになりました。
- 1998年以来、韓国の歴代大統領は韓日首脳会談において、在日韓国人の地方参政権付与のため日本側の積極的な努力と早期実現を要請してきました。また、各政党の幹部におきましても前向きの発言を重ねており、この問題はすでに国際公約ともなっております。
7.【永住外国人住民に地方自治体レベルの参政権を認めるのは時代の要請であります】
- この問題は、これからの日本のあり方、国際社会における日本の役割等、日本の民主主義の成熟度をはかる試金石となっています。一部の後ろ向きの外国人危険論や内外の諸情勢等を口実に、私たちの住民としての願いをこれ以上先送りにすべきではありません。永住外国人住民に地方自治体レベルの参政権を認めるのは時代の要請であります。強制社会と国際化は着実に進んでいます。国際社会も注目しています。私たちが地域社会の発展に一層貢献できますよう、日本の開かれた政策の実現が強く望まれています。
平成22年2月10日受理
陳情人北本市議会議長高橋節子様
更新日:2021年03月31日