【7月31日】きたもとのお盆様

更新日:2021年03月31日

投稿者(市民リポーター)大嶋佐知さん

市民リポーターの大嶋佐知です。

皆さまの家ではお盆をどのように過ごされますか?
北本市内でも、地域ごと、お寺ごと、そして家ごとでお盆のしきたりが異なると聞いたことがあります。
盆飾り用品が出回り始める7、8月。並べられている品物にも地域色が出てきますし、時期や傾向もそれぞれ独自のものがあるのだなと興味深く感じていました。
その土地で子どもの頃から毎年なじんできたお盆の習わしって、とても大切なものですよね。

仏壇の周りに笹や提灯や掛け軸などの飾り付けをしたイラスト

『八月は盆月です。盆にはなくなった人たちが、仏様(お盆様)になってそれぞれの家に帰ってくると考えられています。仏様をむかえるために、家ではいろいろなじゅんびをします。
 八月一日は、かまの口あけといって、地獄や極楽のかまの口があき、仏様があの世を出発する日です。その仏様がうちに着くのは十三日の夕方で、この日までに、どこのうちでもおはかをそうじし、家では盆棚をかざります。』
(「北本のむかしばなし」より)

地方によっては7月のお盆、8月の初旬あるいは下旬にお盆の行事を行うこともあるようですが、北本市や近隣地域では8月13日~15(または16)日のお盆が一般的です。

お盆の行事というと仏教儀礼のように思われがちですが、古くから日本に伝わるご先祖様をまつる風習が、さまざまな宗教行事や仏教の先祖供養などと一緒になって現在のような形となったのだそうです。
盆提灯の形や飾り方にも地域によって風習の違いがありますし、盆花も蓮だったり牡丹だったり様々。
キュウリの馬でやってきてナスの牛で帰っていくという所もあれば、気をつけて来てもらうよう行きも帰りも牛という所もあるそう…。
100戸あれば100通りのお盆がある、というのが正しいようですね。

今回は「きたもとのお盆様」について、近隣のご年配の方に盆飾りやその意味、お盆の過ごし方などを教えてもらいました。

さて、まずは盆棚を飾ります。

色紙をこよって縄にはさみ飾り付けられた盆棚の写真

四隅に笹竹を立てたり、縄を張ってホオズキを下げたり、色紙をこよって縄にはさみ込むなどして飾ります。
盆棚にはマコモのゴザなどを敷き、先祖の位牌や戒名軸などを移します。
無縁様のためにも、盆棚の下にゴザなどを敷いておきます。

8月13日 お墓へお盆様を迎えに行きます。迎え提灯に火をともし、その提灯にお乗せしてお盆様をお連れするといわれています。お墓が遠方にあるお家では玄関先で迎え火を焚きます。
ちょっとおもしろいのは、お盆様のためのすすぎ水を用意しておいて、それで迎え提灯の下を少し濡らすこと。
盆棚のローソクに提灯の火を移し、長い旅をしてきたお盆様へお供え物をします。

お供え物は「香・花・灯明・水・食べ物」の五供(ごく)です。

赤やピンク・ゴールドの鮮やかな盆花の写真

「香」= お線香、お焼香

「花」= 生花や盆花(紙やプラスチックでできた華やかなもの。大きなほうを盆棚へ飾り、小さなほうは盆棚の下に集まる無縁様へお供えします)

「灯明」= 行燈(あんどん)、提灯、ホオズキ(鬼灯=目の弱いお盆様のための提灯ともいわれています)

「水」= 水、お茶(お盆の時期はお寺からいただいた「ひき茶」をお供えします。ひき茶は湯を注いだあとにお茶を振り入れます)

「食べ物」= 盆棚の上のお盆様と盆棚の下の無縁様に、毎日三食ぼたもち、うどん、だんご、ごはん、南瓜の煮物、昆布の煮物などをお供えします。日本中でもお盆にだんごをお供えする風習は多いようですね。北本のあたりはおはぎ(ぼたもち)やうどん、「よろこぶ」に由来する昆布の煮物を供えるみたいですよ。

どうりで…。お盆用品のコーナーに切昆布やきな粉が置かれているわけがわかりました!

2つの段ボールに入った刻み昆布ときなこの写真

お供えするものには決まりはなく、その家その家に受け継がれてきたやり方がお盆様も一番よろこんでくれるはずですよね。「家ごとに違うんだよ」とお話を伺ったご年配者も何度もおっしゃっていました。

我が家のお盆様のお供えは…

朝「ぼたもち・お茶」、昼「うどん・ひき茶」、夜「南瓜と昆布の煮物・ごはん・お茶」のルーティン。

盆棚に朝・昼・夜にお供えする食べ物・飲み物の写真

盆棚の下の無縁様にもお供えをします。

8月15(または16)日 お盆様が帰る日は送り火で送ります。盆棚のローソクの火を送り提灯に移し、花や供え物、去年の盆花を持ってお墓に行き、お墓で提灯の火を消します。

お盆の行事は、ご先祖様を身近に感じてみたり、なくなった人を偲んだり、また供養してくれる人のいない者たちにも心配りをする心優しい風習だと感じます。地域やお家に伝わる盆飾りのひとつひとつにも意味がありますし、代々のご先祖様たちもまた同じように先祖を大切にする気持ちを受け継いでこられたのだと思うとなんだか胸がいっぱいに…。北本のあたりはまだまだ昔ながらの風習がたくさん残っていますので、皆さまの「我が家のお盆」についても聞いてみたいですね~。