【3月12日】春の文化講演会「俳句が力になるとき」~市民文芸誌『むくろじ』第40号発刊記念~

更新日:2021年03月31日

投稿者(市民リポーター)佐藤正子さん

こんにちは。市民リポーターの佐藤正子です。

3月12日、北本市文化センターで行われた「春の文化講演会」に参加してきました。

会場いっぱいに多くのお客様がいすに座り講演を聞いている写真

市民文芸誌『むくろじ』のチラシ

毎年、「北本市文化団体連合会」が主催している「春の文化講演会」ですが、今回は「北本市文化団体連合会」「市民文芸誌『むくろじ』第40号記念事業運営委員会」の2団体による主催。
そして「北本市教育委員会」が共催し、3つの団体が協働して開催されました。

むくろじ冊子の表紙

今年は市民文芸誌『むくろじ』の第40号記念です。
そして講演会の講師が俳人の正木ゆう子先生ということもあり、参加者には、毎年『むくろじ』に投稿している人はもとより、過去に投稿経験があるという人も大勢いらっしゃいました。

開会式で、3団体の会長、委員長、教育長のご挨拶のあと、正木先生が「俳句が力になるとき」を演題として講演をしてくださいました。

はじめに、2011年3月の東日本大震災で被災した福島県南相馬市の子どもたちの作品の紹介。
その後、2016年4月の熊本地震後の熊本日日新聞に投稿された作品を紹介し、被災地の状況等も振り返りながら、お話してくださいました。

正木先生は、今回の北本市の講演会が行われる少し前にも、福島・熊本を訪れたとのこと。
作品は、残念ながらWEB上での掲載は出来ないのですが、素晴らしい俳句ばかりです。
南相馬市の子どもたちは、自然に触れられた時の素直な気持ちを俳句で上手に表現していました。

正木先生は2011年以降、定期的に南相馬市の子どもたちに俳句を教えています。
地震が起きた直後、子どもたちが言葉を上手く言えなくなってしまっている。言葉を胸にしまいこんでしまっている。そういった状況を被災地へ行った人から知らされ、正木先生は「言葉を内側から表現出来るようにならないか」という想いから、2011年12月に南相馬市の子どもたちに会いに行きました。
それは、地震から9か月が経った頃です。当時は一日のうち2時間だけ、やっと外出が許可されていたそうです。
子どもたちは、屋外に出て、見たり聞いたり感じたりしたことや心に浮かんだ言葉を紙にスケッチしました。
無邪気に自然観察をして、様々な言葉を紙に記し、仮設校舎へ戻ってから言葉を組み立てるように俳句を作ったそうです。
そして、浮かんだ言葉に季語を添えることで、俳句を作ることが出来たとのこと。
完成した俳句は短冊へ書き、作品として残しました。
子どもたちの作品には「春の土」を詠んだものもありました。季語でもありますが、土壌汚染が問題となった時期でもあり、私は、「土の尊さ」を作品から感じました。 他にも、コスモスや木々を描いた作品等、子どもらしい視点で自然を描いた作品、春の空を眺めながら心に何も浮かばない状況を表現した作品等、素晴らしい作品がありました。地震や津波が起きていなければ、豊かな自然で、無邪気に遊べるはずであった子どもたちの気持ちを想うと切なくなりました。

福島の作品の紹介後は、正木先生の故郷でもある熊本の人々の俳句も紹介してくださいました。作品は、熊本地震の後に熊本日日新聞文芸欄に投稿された俳句です。その作品には車中泊を詠んだものも多かったそうです。また、避難中の様子の他にも、阿蘇の大地や夜空の美しさも描かれていました。
熊本の皆さんの様子を振り返りながら、作物の実りの素晴らしさや、季語によって感じられる自然の力強さについても触れられていました。

そして、正木先生は、お兄さんが生前、闘病中に俳句を詠まれたことにも触れられ、「困難な時や病気の時の俳句は威力を発揮する」ということも話してくださいました。
私も、俳句は、苦しい時に言葉によって表現することで、心の支えになるのだと感じました。
苦しい時だけでなく、辛い時、寂しい時にも俳句を詠むことで癒されるように思います。

最後は、四季についてのお話。俳句の季語と太陽系の話って繋がってるんだ!!という感動とともに、私たちは自然の大きな力に生かされていること、そして、自然の素晴らしさを俳句を通して表現出来ることを実感し、俳句にスケールの大きさを感じました。

正木ゆう子第5句集の写真

今回、参加された人たちの中には、俳句を作っていたけれど難しくて段々と投句しなくなったという人もいらっしゃいましたが、今回の講演で再び作りたいという意欲を持たれた人もいらっしゃると思います。
今回の正木先生のお話を聴いて、俳句はもっと自由な気持ちで楽しく作れると思いました。
そして、時には心の支えにもなり、人生を豊かにしてくれるように感じます。
これは、俳句だけでなく、短歌、川柳、散文でも同じだと思います。
私も、言葉で表現することを、これからも大切にしたいと思います。